『平成24年度 後期 中級伝統的瓦葺技能研修会』7月静岡会場 活動報告
2012年09月03日
平成24年度 後期 中級・伝統的瓦葺技能研修会 7月報告書
日時 平成24年7月27日(金)~29日(日)
会場 株式会社 瓦粋 研修場
参加者 研修生 12名 オブザーバー参加者10名 内部講師 理事長以下8名 補助員2名
1日目
今回から実技講習へと入っていきます。実技講習では、23年度前期の講習で作成した原寸図を基に屋根の葺き上がりイメージを施工に反映するための技能を学んでいきます。
まず、空葺では、野地の状態が瓦の葺き上がりに大きく影響するため、野地修正が重要になります。野地修正の基準は、原寸図を基に屋根全体がバランスよく納まるように各基準点を設定し、野地修正を行います。今回は流し桟木での野地修正を学び、横桟木の基準出しへと進んでいきます。受講生は普段の施工方法と照らし合わせながら、より良い技能を身につけようとする姿勢が見られました。
2日目
横桟木打ちから、横割り付け墨出し、縦桟木打ちと作業が進む中、割付け基準となる屋根の中心、破風尻の基準、隅先の基準出しでは、受講生はもとより、オブザーバー参加者からも多くの質問が寄せられました。この後作業は、箕甲段野地作り、瓦座面戸施工へと進みます。これらの作業のでは、治具(作業を効率よく行う為に考案した道具)を使用しての作業を学びました。治具の形状は考案した人により様々ですが、作業の基準となるポイントを的確に捉え応用性かあることが重要です。空葺で瓦を葺く上でこれらの作業工程が屋根の仕上りの8割を決める重要な工程となり、土葺での基準釘がこれにあたるので、受講生、オブザーバー参加者ともメモを取りながら真剣な表情で作業に取り組みました。
3日目
瓦座面戸取り付けを済ませ、瓦選別作業へと進みます。瓦選別は、長さ、幅、捩じれ、谷の深さ、ノサ・カギ等、瓦の形状・状態を的確に把握することにより、屋根のどの位置に使用するかを決める重要な作業です。選別に使用する治具も、瓦の納まり状態を考慮してどのポイントを計測するのが良いのか、選別した瓦をどの位置に使用するかを、一覧表を作成し検証する手法を学びました。
又、3日間を通して作業の合間では、受講生は描き直した原寸図を改めて講師陣に検証してもらい、オブザーバー参加者は縄弛み線の実測検証を行うなど、この講習会でより多くの知識を持ちかえろうとする姿勢で溢れ、活発かつ充実した講習会となりました。
『平成24年度 後期 中級伝統的瓦葺技能研修会』5月京都会場 活動報告
2012年06月13日
平成24年度 後期 中級 伝統的技能研修会 於:京都府 コミュニティー嵯峨野
参加者 受講生:12名 オブザーバー:5名 講師:7名 役員・補助員:13名
平成24年5月25日(金)
(時限)3時限 (科目)開講式 (講師)理事・監事
「 オリエンテーション 記念撮影 」
松枝副理事 挨拶
塚本理事長 挨拶
受講者確認・紹介
オブザーバー確認・紹介
理事紹介
北原副理事 カリキュラム説明
記念写真撮影
平成24年5月25日(金)
(時限)4、5時限 (科目)保護・法規
(講師)西川英佑氏 ・資料とスライド
「 文化財建造物の地震被害と耐震対策 」
・そもそも木造建築は「強いのか」「弱いのか」という疑問から、
過去に起こった地震とその地震の後の修理の文献を調査。
1 安政地震と薬師寺東塔修理
2 東寺 講堂修理
3 明治の古社寺保存法制定後の修理
・唐招提寺と東大寺修理
当時外観重視で、中はどうでもよかった。
西洋の技術を使っている。
4 関東大震災の被害
5 法隆寺修理
坂氏による研究により大きなターニングポイントとなる修理となる。
6 近代の修理
・実際の調査の過程
1 文化財建造物の診断
目標となる建物がどのような状態になっているか把握する。
2 対策方針の策定
・意匠を損なわないこと ・部材を傷めないこと
・可逆的であること ・区別可能であること
3 旧神戸居留地十五番館 4 木造民家 5 清水寺 三重塔
≪塚本理事長よりアラミド繊維について質問≫
平成24年5月25日(金)
(時限)6、7、8時限
(科目)維持管理
(講師)塚本理事長
「瓦體新書」より
1 雁足
きれいに足がそろっている建物は美しい。
2 起りと白銀比(大和比)
普段の生活の中にある大和比
どういう比率が見えてくるのか
自分の中で何がかっこいいのかを探る。
3 見付け
現場に入る前その位置に立ち、いろんなバランスを見て、この空間にどう表現したいのか考える。
4 棟の勢い
積み方次第で影の出方が違い、勢いが出たり、逆に勢いが殺されたりする。
5 影
季節、時間の変化によって、瓦の見え方も変化する。それらを見比べることにより自分なり
の見解を見出す。
(講師)丹監事
1 葺師としての心得
お施主に喜んでもらえる仕事をする。
お施主に各部材についての由来をちゃんと説明をすることが大事
2 次の世代に瓦を伝える
火入れ式 鬼立て式 儀式等、思い出を作ってあげるのも仕事
震災は宿命うまく付き合っていく。
≪塚本理事長質問 工法で注意されていること≫
(講師)河合監事
「伝統的土葺き工法の考察」
1 利点 難点 葺いた後すぐには上に上れない等。
2 下葺き材
通気性のある下葺き材。杉皮等
3 葺き土
ワラサ 稲わらを練りこみ一か月ねかせ、藁を足して練り返す。
4 地葺き
土を置く方が熟練度がいる。三点法
平成24年5月25日(金)
(時限)9,10時限 (科目)文化財瓦の製造(京瓦)
(講師)浅田晶久氏 ・資料とスライド
「 京瓦・京瓦の歴史と伝統技能継承 」
1 瓦の性能について
2 京瓦とはなにか
もう他の産地と違いはない。京都の地で伝承された技術を用いる。
並、磨き、本うすという三段階の磨きがある。
磨きで瓦の性能が上がる。
3 熟練者と弟子との動きの違い
熟練者は短時間で長いストロークで磨く。
4 古瓦の粉砕再利用
試験段階ではあるが、かなりいい結果が得られた。
平成24年5月26日(土)
(時限)1、2、3時限 (科目)調査方法・概要
(講師)高品正行氏 ・資料とスライド
「 調査法・概要・粘土瓦の変遷;製造、意匠の変遷 」
1、日本瓦製造の概要年表 2、瓦製造の概要
3、製造方法による分類 4、現代瓦の産地
5、瓦の機能(目的) 6、粘土瓦製造に関しての参考
7、瓦の歴史(軒丸瓦、軒平瓦を中心に)8、唐草紋の意味
9、粘土瓦の気孔性の意味 10、終わりに
瓦の機能として12項目(強度から施工性まで)あげた中で、ある項目を求め過ぎると全体の
バランスが崩れるおそれがある。
瓦頭や唐草の紋様は形を真似るだけでなく、本来あったであろう意味に興味を持ち大事にした
い。折に触れ、瓦宇小林章男氏との話やスライドでデイリーの記事
「汗かいた東大寺の瓦」 (2003年3月7日)
平成24年5月26日(土)
(時限)4、5、6時限 (科目)工法調査
(講師)青木弘治氏 ・資料とスライド
「 瓦葺の仕様・工法の把握 」
現状屋根の計画の把握
1、屋根形式・大きさの調査(屋根面積の算出・規模の把握)
2、納まり基準の確認と調査
3、意匠に関する箇所の調査
各部工法の調査
1、野地 2、葺土 3、瓦葺 4、棟積
5、鬼(獅子口)の据え方 6、箕甲 7、螻羽の納まり
葺き材(解体後)の選別と区分け
1、各瓦数量の拾い、使用瓦の確認
2、各使用瓦の形状・寸法の実測
拒金の使い方
受講生を交えて平勾配と隅勾配、隅勾配と山勾配(真隅)を製図
講義の中で
割付が均等であるとはかぎらない。
前の人の割付け方、葺き方、逃げなどを見逃さない要に。
古いものであるから歪み等あるが、元の意図、形状を読み取り修理。
平成24年5月26日(土)
(時限)7時限 (科目)仕様調査
(講師)北原清治氏 ・資料とスライド
「 瓦葺の仕様・工法の把握 」
屋根の構造を数学的にみてみる。
・経験の積み重ねである技能を論理的に説明するために。
・正確な図面を描くには正確な寸法(屋根全体、部材等)が必要。
その為の計り方や要点を説明
提案として、ある一定の法則性のある数値の一覧表化。Excelを使った曲線
(懸垂線、放物線)の一覧表化を説明。
平成24年5月26日(土)
(時限)8、9、10時限 (科目)修復概論
(講師)亀井信雄氏 ・資料とスライド
「 文化財施策の近年の展開 」
1、文化財保護の現状
2、文化財保護をめぐる新たな試み
特論1 文化財建造物の復原について
文化財建造物復原の歴史
現在の保存修理における復原の基本的考え方
特論2 遺跡の保護と建物復元
事例として平城宮第一次大極殿の復元の流れを冊子とともに説明
その中で
大極殿復元に関して直接の資料(遺物、文献、絵画)は限られている為、現存する古代建築の
調査研究と合わせて推定し復元された。 ただ、いかに最善を尽くした結果であっても推定は
推定であり、この大極殿そのものが過去にさも建っていたかのような誤解を与えないようされ
ないよう、そのための意識と努力を私達携わる者は忘れることがあってはならない。
平成24年5月27日(日)
(時限)1、2、3時限 (科目)保存修理一般
(講師)野尻孝明氏 ・資料とスライド
「 文化財修復:原理原則 」
修理事業(工事)の流れと関係者
・特徴 先に建物がある ・調査と記録が重要 ・公共性が高い
原理原則
→身近なところでは...
きまり、きまりごと、とりきめ、きめごと、約束...
きまり→文書、運用
修理事業の文書 (原理原則のありか)
・設計図書(仕様書)→解体工事、調査・記録
・破損調査 ・技法調査(仕様調査) ・実施仕様 ・史料調査
以上までを、主に専修寺如来堂を参考に説明
・文化財建造物保存修理補助事業実務の手引き(H15、H17改訂)
・文化財保護法 (M4太政官布告、M30古社寺保存法)
・ヴェニス憲章 1964年
受講生が順に朗読し講義終了
平成24年5月27日(日)
(時限)4、5、6時限 (科目)屋根工事
(講師)春日井道彦氏 ・資料とスライド
「 建造物屋根形式 工法の基礎知識 (工法 本瓦) 」
1、概説 2、屋根形式 3、瓦の発生
4、瓦の種類と名称 5、瓦葺の葺き形式 6、屋根葺
切妻造 国宝東大寺転害門
春日造(本瓦葺は希少) 正倉院スギモト神社 鶴林寺行者堂
流造(希少) 重文権現堂神殿(天明6年頃 沖縄県石垣島)
寄棟造 国宝興福寺東金堂(応永22年)
方形造 鑁阿寺(バンナジ) 東大寺行者堂
入母屋造 国宝太山寺本堂(愛媛県)
錣葺(シコロ) 四天王寺金堂(戦災消失) 東大寺念仏堂
重文地蔵院本堂
重文鴻池新田会所本屋及び座敷棟(東大阪 民家)
(春日井氏 初めての仕事とのこと)
撞木造(シュモク) 善光寺本堂(長野県-山梨県)
重文鈴木家住宅(浜松市)
唐破風、千鳥破風 国宝姫路城天守、小天守
上記を含め多数のスライド画像とともに説明。